偶数と有理数の個数は同じ

※ この記事で言う「個数」とは、数学的に言うと「濃度」を指します。


皆さんご存知の通り、「偶数」とは2の倍数のことを言う。すなわち、次のような数である。
  2, 4, 6, 8, 10, 12, 14, 16, 18, 20, …

序でに言うと、「奇数」とは2で割り切れない整数のことを言う。すなわち、次のような数である。
  1, 3, 5, 7, 9, 11, 13, 15, 17, 19, …

この「偶数」と「奇数」が同じ数だけあるということについては、直観的に明らかであり、疑いようもないだろう。

しかし、この記事で言いたいことはそのようなことではない。
「偶数」と「有理数」の個数が同じだと言うのである。

有理数」とは何だったかと言うと、整数同士の分数で表せる数である。すなわち、次のような数である。
  1, 2, 3, …, 1/2, 2/2, 3/2, …, 1/3, 2/3, 3/3, …

見ての通り、「偶数」は全部「有理数」に含まれる。
すると一見「偶数」より「有理数」の方が圧倒的に多そうだが、実際には同数だというのである。
一体どういうことだろうか。

(ここには正の偶数・有理数しか示していないが、実際には0や負の数もある)


そもそもどうやって「個数」を比べるのか?

TOKIOのメンバーは5人であるのに対し、V6のメンバーは6人である。
つまり、TOKIOよりV6の方が人数が多いのである。
これを、数学的には次のように考える。

TOKIOからV6への対応付け

TOKIOのメンバー1人1人に対し、被らないようにV6のメンバーを対応付ける。
すると、上図のようにTOKIOのメンバー全員について対応するV6のメンバーを定めることができる。
(上では五十音順に並べたが、順番はどうでもよい)

この時、
「TOKIOの人数 ≦ V6の人数 である」
という。

V6からTOKIOへの対応付け

では、V6からTOKIOへの対応付けはどうだろうか。
今度は、上図のようにV6メンバーが余ってしまう。

この時、
「V6の人数 ≦ TOKIOの人数 ではない」
という。


「TOKIOの人数 ≦ V6の人数」なのに「V6の人数 ≦ TOKIOの人数」でないのだから、当然
「TOKIOの人数 < V6の人数」であると言える。


では、「個数が同じ」とはどういうことか?

今度は、羞恥心と悲愴感(いずれも3人)を比べる。
先程と同様に対応付けを考えると、次のようになる。

羞恥心と悲愴感との対応付け

羞恥心と悲愴感のメンバーが過不足なく1対1に対応付けられる。

このような対応付けが可能な時、
「羞恥心の人数 = 悲愴感の人数」
と言える。


「偶数」を数えてみる

さて、冒頭の命題「偶数と有理数の個数は同じ」に戻ろう。

いきなり偶数と有理数の対応付けをしてもよいが、面倒なのでまずは偶数と自然数の対応を考える。

偶数と有理数との対応付け

上図のように小さい順に対応付けていけば、偶数は自然数と1対1に対応付けられる。

つまり、上と同じ理屈により
「偶数と自然数の個数は同じ」
と言えるのである。
自然数には偶数の他に奇数もあるのに、である。


「有理数」を数えてみる

上の話は、「全ての偶数に1から順に番号を振ることができる」ということと同じことである。
つまり、番号を振ることができるものの個数は自然数の個数と同じということである。
偶数に番号を振る

そこで、今度は「有理数」を数えてみることにする。

偶数は、小さい順に見ていけば数え上げられた。
しかし、有理数の場合ははそうはいかない。
では、どうしたら全ての有理数に番号を振ることができるのだろうか?

そこで、有理数を次のように並べてみる。

有理数を並べる

これでは重複している数(約分すると一緒になる数)が有るので、余分な数は消去する。

既約で無い数を消去

こうしてしまえば後は番号を振るだけである。
左の列から順に見ていけばよい。

有理数に番号を振る

よって、やはり偶数の時と同じ理屈により
「有理数と自然数の個数は同じ」
と言える。
自然数でない有理数も山ほど有るにもかかわらず、である。


負の数はどうする?

先程から正の偶数や有理数ばかりを扱ってきたが、0や負の数はどうするのだろうか。
これについても、ちゃんと番号を振ることができる。

例として、整数に番号を振ってみる。

整数に番号を振る

このように、正の数と負の数に交互に番号を振っていけば、きちんと数え上げることができるのである。


結論

個数が無限であっても、
「自然数」「偶数」「奇数」「素数」「整数」「有理数」
など、きちんと番号を振ることができるものの個数は同じである。

因みに、この個数のことを「可算無限濃度」といい、「アレフ0」(アレフゼロ)と表す。


残念ながら、無理数や実数は数え上げることはできない。
つまり、偶数や有理数よりも多いのである。
(無理数や実数の個数は「連続体濃度」(アレフ)と呼ばれる)


執筆: 2005年5月15日, 最終更新: 2009年9月23日

雑学トップに戻る
鵺帝国トップに戻る