人一倍は人の二倍

「人一倍努力する」などという言い回しを使うが、この「人一倍」とはどういう意味なのだろうか。

文字通り、「人の一倍」である。
しかし、「人と同じだけ」という意味ではない。
実際には、「人の二倍」という意味である。

一見すると矛盾しているようだが、ここには「倍」という言葉の多義性が潜んでいる。
「人一倍」の「倍」は、一般に言うところの「倍」とは違うのだ。

現在、一般に「n 倍」といったときは、元の値に n を掛けた値を指す。
しかし、これは明治以降の用法である。
古くは、n + 1 を掛けた値を指していた。
つまり、今で言う「n 倍」のものを足したもの、ということである。
「2倍」なら元の3つ分、「半倍」なら元の1つ半である。

因みに、現代の「倍」と同じ意味で、「層倍」という言葉も使われていた。
「薬九層倍」の「層倍」である。