山手線で N 周すると幾ら掛かる?

山手線周回運賃計算器を用意しました。

山手線は、東京にあるJRの環状線である。

山手線

1周 34.5 km、30駅。約1時間で回ることができる。
では、この山手線に乗って何時間もぐるぐる回りたいと思ったら、運賃は幾ら払えば良いのだろうか?

目次

準備: 各駅間の運賃

山手線の各駅間の片道運賃(鉄道駅バリアフリー料金を含む)を表にすると、次のようになる。
(※本稿では、都合上「IC運賃」ではなく「(紙の)きっぷの運賃」を示す)

山手線各駅間の運賃
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山手線内は全域が「東京近郊区間」であるから、実際の乗車経路に関わらず最短の経路で考えればよい(旅客営業規則第157条2項)。
難しいことは考えなくても、要は駅の券売機の上に掲げられている運賃表の運賃を払えば良いのである。

わかり難いのが「発駅に帰ってくる」場合の運賃(上の表の灰色のセル)であるが、この場合も「発駅に帰ってくる」適当な経路を考えれば良い。
具体的には下図のような経路である。

山手線附近の環状線1周の経路

例えば神田発着なら神田→秋葉原→御茶ノ水→神田という経路を用いて150円、東京発着なら東京→錦糸町→秋葉原→東京という経路を用いて230円、と計算できる。

《注》日暮里~赤羽間が経路特定区間(田端経由・尾久経由)になっている関係で、上図※印の経路はマルス端末では発券できない。 そのため、この経路は窓口で発券を断られる場合がある。
その場合、日暮里・西日暮里・田端発着の山手線1周の運賃は230円ではなく後述の300円となる。

1. 山手線1周の運賃

さて、N 周の運賃を考える前に、まずは1周の運賃について考えよう。

上で見たように、以下の運賃を払えば山手線を1周する乗車券を買うことができる。

だが、実はもっと安く済ませることができる

一般に、経路の途中で乗車券を分割し、2枚の乗車券を併用して使うことが可能である。
この方法を使うと、例えば「新宿~代々木間の往復乗車券」を用いて

という乗り方で新宿発着で山手線外回りで1周することが可能である。
新宿~代々木間は片道150円であるから、往復でも300円で済む。

山手線の隣合う駅間の片道運賃は全て150円だから、結局どの駅から始めても300円あれば山手線を1周できるということである。

まとめると、山手線1周に要する最低運賃は次のようになる。

2. 動的計画法

以降、山手線を外回り(地図上時計回り)で回る場合について考えるものとする
勿論、内回り(地図上反時計回り)の場合も同様である。

ここまでの情報をまとめると、「X 駅から外回りで n 駅だけ進む」のに必要な運賃は次の表のようになる。(n = 1, …, 30)
「30駅進む」というのがすなわち「1周する」のに対応する。

山手線各駅間の運賃
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赤字で書いたのが、複数枚の乗車券を併用する場合にどこの駅で乗車券を分割するかである。
(例えば「有楽町から30駅」のセルには「東京で分割」と書いてあるが、これは「『有楽町→東京』と『東京→有楽町』の2枚の乗車券に分割せよ」という意味である)

実は、これだけの情報があれば、2周目以降n = 31 以降)の運賃も簡単に求めることができる

1枚の乗車券で進むことができるのは高々30駅なのだから、「X 駅から n 駅進む」のに必要なのは

  1. X 駅から k 駅進む」のに必要な乗車券1枚 (k ≤ 30)
  2. X 駅の k 駅先の駅から nk 駅進む」のに必要な乗車券の組

の組み合わせのうち最も安いものであると言える。
つまり、「X 駅から n 駅進む」のに必要な運賃を f(X, n) と書くことにすると、これは 動的計画法による運賃の算出 動的計画法による運賃の算出 というアルゴリズムで順々に求めることができるということである(但し X + kX 駅の k 駅先の駅を表す)。
このように表を順々に埋めていくようにして解を求めるアルゴリズムは「動的計画法」と呼ばれる。

このアルゴリズムに従って n = 60(2周分)まで求めると、次の表が得られる。

山手線各駅間の運賃
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赤字は乗車券を分割すべき箇所。※については上述の通り。)

これを見ると、山手線2周(60駅進む)に要する運賃は

であることがわかる。

3. 山手線 N 周の運賃

さて、いよいよ一般の N 周の運賃である。

上述の計算方法で3周, 4周, …, 25周 (n = 90, 120, …, 750) の運賃も求めると、次の表が得られる(乗車券の分割箇所は省略)。

山手線各駅間の運賃
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この表をよく見ると、14周以降の運賃が全て150円の倍数になっていることがわかる。つまり

N ≥ 14 のとき、N 周の運賃は

である。 実際、十分大きなな回数の周回に対して、必要な乗車券を分割箇所も含めて詳しく見てみると

発着駅 → … → 神田 → 神田 → … → 神田 → 神田 → … → 発着駅

または

発着駅 → … → 秋葉原 → 秋葉原 → … → 秋葉原 → 秋葉原 → … → 発着駅

という風になっている。よって、必要な周回の回数だけ「神田→神田」または「秋葉原→秋葉原」の乗車券(いずれも150円)を買い足せば何周でもできると言える。

4. 取り敢えずまとめ(?)

以上より、山手線 N 周の運賃は、

と言ってよい…… のか?

5. もっと安く済ませるには

実は、もっと安く済ませることができる

JRの特別企画乗車券で、「都区内パス」というのがある。

都区内パス
東京都区内の普通列車の普通車自由席が1日乗降自由。大人760円。

これを使えば、山手線を6周以上回るなら760円で済むことになる。
すなわち、必要な運賃は次の表のようになる。

山手線各駅間の運賃
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赤字は乗車券を分割すべき箇所)

6. もっともっとおトクな乗車券

実は、もっともっとおトクな乗車券も存在する

山手線内均一定期券
山手線内の各駅で乗降可能な定期乗車券。大人1ヶ月14,970円(1ヶ月のみ)。

これを使えば、山手線を6周する乗車を1ヶ月間に20日以上行うのであれば、安く済む。
どうしても暇が有り余って仕方が無い人は、やってみると良いかもしれない。