仰げば尊し

雑学というようなものでもないが、意味が解り難いと言われる「仰げば尊し」の歌詞を、確認の意味を込めて解釈する。

「仰げば尊し」と言えば卒業式で定番の唱歌である。
この歌詞は文語体であり、些か解り難い。

仰げば尊し 作詞者不明

一、
仰げば尊し我が師の恩
教えの庭にもはや幾年
思えばいと疾しこの年月
今こそ別れめいざさらば
二、
互いに睦みし日頃の恩
別るる後にもやよ忘るな
身を立て名を上げやよ励めよ
今こそ別れめいざさらば
三、
朝夕慣れにし学びの窓
蛍の灯火積む白雪
忘るる間ぞ無き行く年月
今こそ別れめいざさらば

ここで、間違え易いと思われる箇所を確認する。

はや幾年(いくとせ)
「何年も経ってしまった」の意。「行くとせ」などではない。
いと疾し(いととし)
「とても早い」の意。光陰矢の如し。
別れめ(わかれめ)
「め」は助動詞「む」(現代語の「う」「よう」に相当)の已然形。「別れましょう」の意。
間ぞ無き(まぞなき)
「間は無い」の強意表現。

歌詞が解り難いのは、古典文法に起因するものが多いように思われる。

これを踏まえた上で現代語で解釈してみると、次のようになる。(直訳ではありません)

一、
見上げてみると尊いものである先生の恩
この学校に通うようになってもう何年も経つ
思い返してみるととても早かったこの年月
今、別れましょう では、さようなら
二、
互いに親しみ合った日頃の恩
別れた後にも忘れないでほしい
世間から認められ 名声を得て 励みなさい
今、別れましょう では、さようなら
三、
朝から晩までいつも慣れ親しんだ学舎の窓
苦労して勉学に励んだ(蛍雪の功)
忘れる間も無い過ぎる年月
今、別れましょう では、さようなら

歌詞の意味を把握することで、より深く理解することができるだろう。