隕石の名前

本ページでは以前「隕石の名前は落下地点を管轄する郵便局の名前を付ける」という説を紹介していましたが、この説は国際隕石学会により否定されています。正しくは本文記載の通りです。

地球上では多くの隕石が発見されている。
日本国内で発見されたものも幾つもある。

では、その名前はどのように付けられるのだろうか。

国際隕石学会の隕石の命名のガイドラインを読むと、第3.1節にて以下の通り定められている。(原文英語・筆者訳)

新しい隕石は、それが最初に回収された地点の近くの地理的場所に因んで命名されることになる
不必要な重複や曖昧性を回避し、かつ恒久的地物(広く用いられる地図上に現れ、かつ回収地点に十分近くてその場所の情報を伝えるに足るもの)を選択するためにあらゆる努力が払われる必要がある。
名称として許容されるものには、自然地理的地物(川、山、湖、入江、岬、島など)、政治的地物(町、郡、州、地方など)、人為活動的地点(公園、鉱山、史跡††、鉄道駅など)が含まれる。
これら以外の主に直近の人為的活動に関連した地点(建物、商業地域、学校、橋、道、ゴルフコースなど)は一般には隕石の名称として許容されない。
人口が疎であり地名が殆ど付いていない地域においては、回収地点の緯度及び経度が十分に決定できるのであれば、比較的恒久性の低い地物(牧場や農場など)や、極端な場合には地物的特徴の地元における非公式な名称も許容され得る。
広域の地理的地物(大陸、国、地方、州、大きな郡など)の名称は、より詳細な名称が使用可能な場合は、避ける必要がある(但し §3.3 及び §3.4 に定める場合についてはこの限りでない)。
一般に、選択される地物は、同種の地物のうち回収地点に最も近いものである必要がある。
例えば、回収地点に最も近い町の名称が既に使われていたとしても、2番目に近い町の名称を隕石に付けるべきではない。
このような場合は、別種の地理的地物(小川など)が利用可能なのであれば、それを選択する必要がある(利用可能でない場合は §3.3 を適用する)。

隕石の名称は、地理的場所の名称全体を以て命名されることになる。
但し、委員会の裁量に拠り、簡潔さのために方角を表す部分(「北」など)や自然地理的一般名称(「山」や「湖」など)を省くことはあり得る。

隕石の名称に関する2つの誤解として、「隕石は最も近い郵便局に因んで命名される必要がある」「隕石は町などの人の多く住んでいる場所に因んで命名される必要がある」というものが広く流布されている。これらはいずれも正しくない。

††史跡とは、「それの歴史的意義において、また、それの近代における主たる機能がその歴史を示すことであるということにおいてよく知られている地点」と定義される。

つまり、隕石の名前は必ずしも行政上の地名に拠る必要は無く、回収地点が適切に表現できるのであれば、川の名前でも山の名前でも湖の名前でも何でも隕石の名前になり得るということである。
実際、例えば滋賀県大津市の田上山中で回収された隕石は「田上隕石」と命名されている。

個人所有の島の名前を所有者が付けた例(長崎県の詩島)など、地図に乗る地物の名前はある程度任意に命名できる場合がある。
隕石の名前を直接命名することは難しそうだが、上手くすれば地物の名前を経由して個人名などを隕石の名前に遺すこともできるかもしれない。

参考文献