ロビンソン・クルーソー

『ロビンソン・クルーソー漂流記』と言えば、18世紀にイギリスで出版された冒険小説として有名である。
イギリスの近代小説の祖とも言われる。

では、この『ロビンソン・クルーソー漂流記』の原題をご存知だろうか。

“The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner: Who Lived Eight and Twenty Years, All Alone in an Un-inhabited Island on the Coast of America, Near the Mouth of the Great River of Oroonoque; Having Been Cast on Shore by Shipwreck, Wherein All the Men Perished but Himself. With an Account how he was at last as Strangely Deliver'd by Pyrates. Written by Himself.”

である。
68語。

そう。これは世界一長い名前の小説なのである。
今回は、このタイトルを解釈する。

冒頭部分は

The Life and Strange Surprizing Adventures of Robinson Crusoe, of York, Mariner

《訳》ヨーク生まれの船乗りロビンソンクルーソーの生涯と驚くべき冒険

である。

これだけでも十分タイトルたり得ると思うのだが、更に修飾節が続く。

Who Lived Eight and Twenty Years, All Alone in an Un-inhabited Island on the Coast of America, Near the Mouth of the Great River of Oroonoque

《訳》アメリカ海岸のオリノコ河の河口附近の無人島でたった独りで28年間生き抜いた(ヨーク生まれの船乗り……)

これで終わりかと思いきや、まだ修飾節がある。

Having Been Cast on Shore by Shipwreck, Wherein All the Men Perished but Himself.

《訳》彼以外の全員が死んだ難破により海岸に投げ出されて(アメリカの海岸オリノコ河の……)

やっとピリオドが打たれたと思って安心してはいけない。まだある。

With an Account how he was at last as Strangely Deliver'd by Pyrates.

《訳》奇しくも遂に彼が海賊によって救出されるまでの話と共に。

これで最後である。

Written by Himself.

《訳》彼自身によって書かれた。

長い修飾が多く、とても読み辛い文章である。
否、タイトルである。

約物の使い方等が現代の正書法と異なるので尚更解り辛くなっている。

全体を訳すと、次のような具合である。

『難破して唯一人の生存者となり、アメリカ海岸のオリノコ河の河口附近の無人島の岸に投げ出され、たった独りで28年間生き抜いたヨーク生まれの船乗りロビンソンクルーソーの生涯と驚くべき冒険。奇しくも遂に海賊によって救出されるまでの一部始終。彼自身が記す。』

タイトルと言うよりも寧ろあらすじである。