最長片道切符の流儀とバリエーション

最長片道切符とは、日本の鉄道における「最も長い経路の片道乗車券」です。
一口に最長片道切符と言っても、流儀に依って幾つかのバリエーションが考えられます。
本記事では、そんな最長片道切符のバリエーションを比較します。

目次

最長片道切符について

最長片道切符は、「片道乗車券として発券できる」という制約の下での「最も長い経路」の乗車券です。
細かいルールは省略しますが、「片道乗車券として発券できる」とは平たく言えば「同じ駅を2回通過しない」ということです。
(「Oの字型」や「Pの字型」の経路で2回同じ駅を訪れることは可能ですが、2回目に訪れた時点で経路を打ち切らねばなりません)

最長片道切符という遊びは、古くは1961年に東京大学旅行研究会が探索・旅行を実施しており、以来様々な人が挑戦しています。
2000年に SWA(葛西隆也)さんが整数計画問題として解いて以来、現在では組合せ最適化ソルバによる求解が広く行われています。
問題自体についてや先人達の足跡、求解手法についての解説は以下をご参照ください。

最長片道切符の経路は、流儀に依って幾つかのバリエーションが考えられます。
先人達は特定の流儀に立って求解しているケースが多いようですが、本稿では複数の流儀を列挙し、解を比較します。

求解に当たり筆者が用いたソルバは Python 3.8.5 + PuLP + CBC MILP Solver 2.10.3 です。
求解についての詳細はサブページ「最長片道切符問題の定式化」をご覧ください。

最長片道切符の諸流儀

最長片道切符の経路を考える上では人に依って意見の割れる点が幾つかあり、それぞれについてどのような立場を取るかに依って「流儀」が分かれます。
本稿で扱う「流儀」を以下に示します。各流儀についての詳細はサブページ「最長片道切符の諸流儀」をご覧ください。
(〔〕内は本稿で便宜上付した名称)

ここに示しただけでも128通り[注1]の流儀がありますが、細かい差異も含めると更に数は増えるものと思われます。
(ここに示したもの以外に大きな差異を生む相違点がありましたら教えてください)

最長片道切符の経路

経路概観

下の図1, 図2は、各流儀に則って求めた最長片道切符の経路(券面経路)のうち代表的なもの2つです。
図はクリックで拡大できます。経由する路線や駅の詳細はサブページ「最長片道切符の経由一覧表」をご参照ください。

最長片道切符 図1
図1〔JR鉄道派・運賃計算キロ派・新在同一派〕
最長片道切符 図2
図2〔BRT+IGR派・実乗可能粁程派・田端問題否定派・新在別線派C〕

流儀の違いによって券面経路に差異が生じたのは、図に背景色を付けた5箇所のみでした。
差異はそれぞれ局所的であり、流儀の組合せによって複雑に経路が変わるような箇所は殆どありませんでした。
以下、これら5箇所のそれぞれについて、流儀によってどのような差異が生じているか解説します。

北東北(新青森~北上間)

北東北は、私鉄線の通過連絡運輸を認めるか否かに依り結果が変わってきます。

私鉄線の通過を認める場合、IGRいわて銀河鉄道線を挟んで東北新幹線・花輪線を経由することで粁程を大きく伸ばすことができます。
その代わり、盛岡駅を再度通ることはできないので、横手~北上間は田沢湖線に代えて北上線を経由する経路となります。

最長片道切符 北東北(JR線のみの最長路)
JR線のみの最長路
最長片道切符 北東北(IGR線を含む最長路)
IGR線を含む最長路

北東北の営業キロ・運賃計算キロ・実乗可能粁程を比較すると以下の通りとなります。

北東北(新青森~北上間)の粁程(括弧内はJR線に限った粁程)
流儀営業キロ運賃計算キロ実乗可能粁程
JR線のみ882.2914.2894.8
IGR線を含む1,124.7 (1,103.4)1,165.3 (1,144.0)1,124.7 (1,103.4)
+242.5 (+221.2)+251.1 (+229.8)+229.9 (+208.6)

JR線のみの場合に実乗可能粁程が営業キロより 12.6 km 長いのは、川部~弘前間で分岐駅通過の特例が適用できるためです。

南三陸(一ノ関~仙台間)

南三陸は、BRT線の通過を認めるか否かに依り結果が変わってきます。

BRT線の通過を認める場合、大船渡線~気仙沼線BRTを経由することで粁程を大きく伸ばすことができます。
その先も、高城町~仙台間で仙石東北ラインを利用して北へ迂回することができるようになります。

最長片道切符 南三陸(鉄道線のみの最長路)
鉄道線のみの最長路
最長片道切符 南三陸(BRT線を含む最長路)
BRT線を含む最長路

南三陸の営業キロ・運賃計算キロ・実乗可能粁程を比較すると以下の通りとなります。

南三陸(一ノ関~仙台間)の粁程(括弧内は鉄道線に限った粁程)
流儀営業キロ運賃計算キロ実乗可能粁程
鉄道線のみ135.9139.6135.9
BRT線を含む246.1 (190.8)256.5 (201.2)266.1 (210.8)
+110.2 (+54.9)+122.4 (+61.6)+130.2 (+74.9)

BRT線を含む場合に実乗可能粁程が営業キロより 20.0 km 長いのは、松島~塩釜間で特定分岐区間の特例が適用できるためです。
(寧ろ特例を適用を受けずにこの経路で乗車することは不可能です)

南関東(我孫子~橋本間)

南関東は、営業キロ・運賃計算キロを最長とするか、実乗可能粁程を最長とするかに依り結果が変わってきます。
また、実乗可能粁程を最長とする場合、田端問題の解釈に依っても結果が変わってきます。

田端問題肯定派の実乗可能粁程最長路は、営業キロ・運賃計算キロ最長路とよく似ており、特に大宮から先の経路は全く同じです。
差異は東京駅附近に現れており、神田~東京間の分岐駅通過特例や日暮里~東京間の特定分岐区間特例で粁程を稼ぐ経路となっています。

田端問題否定派の実乗可能粁程最長路は、これらとは大きく異なっています。
田端問題の区間が短くなる分、成田エクスプレスの列車特定区間特例(代々木~錦糸町間)や鶴見~横浜間の特定分岐区間特例で粁程を稼いでいます。
図からははみ出していますが、中央線~身延線~御殿場線の順路も田端問題肯定派とは逆方向になっています。

最長片道切符 南関東(営業キロ・運賃計算キロ最長路)
営業キロ・運賃計算キロ最長路
最長片道切符 南関東(実乗可能粁程最長路 田端問題肯定派)
実乗可能粁程最長路(田端問題肯定派)
最長片道切符 南関東(実乗可能粁程最長路 田端問題否定派)
実乗可能粁程最長路(田端問題否定派)

南関東の営業キロ・運賃計算キロ・実乗可能粁程を比較すると以下の通りとなります。

南関東(我孫子~橋本間)の粁程
流儀営業キロ運賃計算キロ実乗可能粁程
営業キロ派・運賃計算キロ派1,088.61,107.01,097.4
実乗可能粁程派(田端問題肯定派)1,080.91,099.31,109.7
実乗可能粁程派(田端問題否定派)1,061.31,080.71,106.1

† 営業キロ・運賃計算キロ最長路の実乗可能粁程は、田端問題否定派の計算方法に拠ります。肯定派の計算方法に拠る場合は 1,103.2 km です。

相生~東岡山間

相生~東岡山間は、運賃計算キロを最長とするか、営業キロ・実乗可能粁程を最長とするかに依り結果が変わってきます。
前者は赤穂線経由、後者は山陽線経由の経路が最長です。

なお、この区間には選択乗車の特例が設定されており、どちらの経路の乗車券であっても、赤穂線か山陽線かを任意に選択して乗車することができます。

最長片道切符 相生~東岡山間(赤穂線経由)
運賃計算キロ最長路
最長片道切符 相生~東岡山間(山陽線経由)
営業キロ・実乗可能粁程最長路

相生~東岡山間の営業キロ・運賃計算キロ・実乗可能粁程を比較すると以下の通りとなります。

相生~東岡山間の粁程
流儀営業キロ運賃計算キロ実乗可能粁程
赤穂線経由57.463.157.4
山陽線経由60.660.660.6
+3.2−2.5+3.2

九州(小倉以西)

九州は、相違点1と相違点5の組合せに依り結果が4通りに変わってきます。

図ハは最も制約の少ない新在別線派Cの最長路であり、営業キロ・運賃計算キロ・実乗可能粁程の全てにおいて4通りのうち最も長い経路です。
図ロは原田~新鳥栖間で博多駅を避けて鳥栖経由となっている点の外は図ハと同じです。

新在同一派の最長路である図イは、新在の重複を避けている分、他の流儀よりも短い経路となっています。
しかし乍ら、分岐駅通過特例(夜明~日田間、吉塚~博多間)や特定分岐区間特例(折尾~黒崎間)が適用可能であり、実乗可能粁程は他の経路と遜色の無いものとなっています。

異色と言えるのが図ニであり、終着点が肥前山口駅ではなく枕崎駅となっています。
尤も、これを最長路とするのは運賃計算キロ派かつ新在別線派A/Bのみであり、かなりの少数派と思われます。
なお、本稿は「起点が稚内、終点が九州」という方向を前提として書いてきましたが、枕崎発着の経路の場合は逆に辿って「起点が枕崎、終点が稚内」としても構いません。
(肥前山口発着の場合、肥前山口~早岐~諫早~肥前山口で環状線一周となり経路が打ち切られてしまうので、逆方向に辿ることはできません)

各流儀による九州の経路
相違点1\相違点5\相違点5
相違点1\
新在同一派新在別線派A新在別線派B新在別線派C
営業キロ派図イ図イ図ロ図ハ
運賃計算キロ派図イ図ニ図ニ図ハ
実乗可能粁程派図イ図イ図イ図ハ
最長片道切符 九州(図イ)
図イ
最長片道切符 九州(図ロ)
図ロ
最長片道切符 九州(図ハ)
図ハ
最長片道切符 九州(図ニ)
図ニ
最長片道切符 九州(図イ)
図イ
最長片道切符 九州(図ロ)
図ロ
最長片道切符 九州(図ハ)
図ハ
最長片道切符 九州(図ニ)
図ニ

九州の営業キロ・運賃計算キロ・実乗可能粁程を比較すると以下の通りとなります。

九州(小倉以西)の粁程
流儀営業キロ運賃計算キロ実乗可能粁程
図イ1,216.61,245.21,247.6
図ロ1,224.21,251.41,246.4
図ハ1,260.71,287.91,282.9
図ニ1,216.11,265.01,238.3

その他の差異

以上に示したのはあくまで各流儀の券面経路の差異であり、実乗経路は必ずしもこれとは一致しません。
実乗経路を最長化する場合、以下の箇所が券面経路と実乗経路との間の差異となります。

また、以下の箇所には粁程に影響しない任意性があります。

全流儀まとめ

本稿で挙げた全ての流儀について、粁程・運賃・乗車券の有効日数を下表に纏めます。
相違点3は結果的に経路に影響しなかったので省略します。

(大きな表が表示されます)
各流儀の粁程・運賃・乗車券の有効日数
#流儀経路粁程(合計)粁程(JR鉄道線のみ)運賃有効
期間
相違点1相違点2相違点4相違点5北東北南三陸南関東相生~
東岡山
九州営業運賃計算実乗可能営業運賃計算実乗可能
1 営業
キロ派
JR
鉄道派
-同一派 図1 図1 図1 図2 図イ 10,682.211,003.810,941.310,682.211,003.810,941.3¥91,63055日
2 別線派A 10,682.211,003.810,941.310,682.211,003.810,941.3¥91,63055日
3 別線派B 図ロ 10,689.811,010.010,940.110,689.811,010.010,940.1¥91,63055日
4 別線派C 図ハ 10,726.311,046.510,976.610,726.311,046.510,976.6¥91,96055日
5 BRT派 同一派 図2 図イ 10,792.411,120.711,071.510,737.111,065.411,016.2¥93,13055日
6 別線派A 10,792.411,120.711,071.510,737.111,065.411,016.2¥93,13055日
7 別線派B 図ロ 10,800.011,126.911,070.310,744.711,071.611,015.0¥93,13055日
8 別線派C 図ハ 10,836.511,163.411,106.810,781.211,108.111,051.5¥93,35056日
9 IGR派 同一派 図2 図1 図イ 10,924.711,254.911,171.210,903.411,233.611,149.9¥93,83056日
10 別線派A 10,924.711,254.911,171.210,903.411,233.611,149.9¥93,83056日
11 別線派B 図ロ 10,932.311,261.111,170.010,911.011,239.811,148.7¥93,83056日
12 別線派C 図ハ 10,968.811,297.611,206.510,947.511,276.311,185.2¥94,16056日
13 BRT+
IGR派
同一派 図2 図イ 11,034.911,371.811,301.410,958.311,295.211,224.8¥95,66057日
14 別線派A 11,034.911,371.811,301.410,958.311,295.211,224.8¥95,66057日
15 別線派B 図ロ 11,042.511,378.011,300.210,965.911,301.411,223.6¥95,66057日
16 別線派C 図ハ 11,079.011,414.511,336.711,002.411,337.911,260.1¥95,88057日
17運賃計算
キロ派
JR
鉄道派
同一派 図1 図1 図1 図イ 10,679.011,006.310,938.110,679.011,006.310,938.1¥91,63055日
18 別線派A 図ニ 10,678.511,026.110,928.810,678.511,026.110,928.8¥91,63055日
19 別線派B 10,678.511,026.110,928.810,678.511,026.110,928.8¥91,63055日
20 別線派C 図ハ 10,723.111,049.010,973.410,723.111,049.010,973.4¥91,96055日
21 BRT派 同一派 図2 図イ 10,789.211,123.211,068.310,733.911,067.911,013.0¥93,13055日
22 別線派A 図ニ 10,788.711,143.011,059.010,733.411,087.711,003.7¥93,35055日
23 別線派B 10,788.711,143.011,059.010,733.411,087.711,003.7¥93,35055日
24 別線派C 図ハ 10,833.311,165.911,103.610,778.011,110.611,048.3¥93,35056日
25 IGR派 同一派 図2 図1 図イ 10,921.511,257.411,168.010,900.211,236.111,146.7¥93,83056日
26 別線派A 図ニ 10,921.011,277.211,158.710,899.711,255.911,137.4¥94,16056日
27 別線派B 10,921.011,277.211,158.710,899.711,255.911,137.4¥94,16056日
28 別線派C 図ハ 10,965.611,300.111,203.310,944.311,278.811,182.0¥94,16056日
29 BRT+
IGR派
同一派 図2 図イ 11,031.711,374.311,298.210,955.111,297.711,221.6¥95,66057日
30 別線派A 図ニ 11,031.211,394.111,288.910,954.611,317.511,212.3¥95,66057日
31 別線派B 11,031.211,394.111,288.910,954.611,317.511,212.3¥95,66057日
32 別線派C 図ハ 11,075.811,417.011,333.510,999.211,340.411,256.9¥95,88057日
33実乗可能
粁程派
JR
鉄道派
否定派 同一派 図1 図1 図2 図2 図イ 10,654.910,977.510,950.010,654.910,977.510,950.0¥91,30055日
34 別線派A 10,654.910,977.510,950.010,654.910,977.510,950.0¥91,30055日
35 別線派B 10,654.910,977.510,950.010,654.910,977.510,950.0¥91,30055日
36 別線派C 図ハ 10,699.011,020.210,985.310,699.011,020.210,985.3¥91,63055日
37 肯定派 同一派 木下
経由
図イ 10,674.510,996.110,953.610,674.510,996.110,953.6¥91,30055日
38 別線派A 10,674.510,996.110,953.610,674.510,996.110,953.6¥91,30055日
39 別線派B 10,674.510,996.110,953.610,674.510,996.110,953.6¥91,30055日
40 別線派C 図ハ 10,718.611,038.810,988.910,718.611,038.810,988.9¥91,63055日
41 BRT派 否定派 同一派 図2 図2 図イ 10,765.111,094.411,080.210,709.811,039.111,024.9¥92,80055日
42 別線派A 10,765.111,094.411,080.210,709.811,039.111,024.9¥92,80055日
43 別線派B 10,765.111,094.411,080.210,709.811,039.111,024.9¥92,80055日
44 別線派C 図ハ 10,809.211,137.111,115.510,753.911,081.811,060.2¥93,35056日
45 肯定派 同一派 木下
経由
図イ 10,784.711,113.011,083.810,729.411,057.711,028.5¥93,13055日
46 別線派A 10,784.711,113.011,083.810,729.411,057.711,028.5¥93,13055日
47 別線派B 10,784.711,113.011,083.810,729.411,057.711,028.5¥93,13055日
48 別線派C 図ハ 10,828.811,155.711,119.110,773.511,100.411,063.8¥93,35056日
49 IGR派 否定派 同一派 図2 図1 図2 図イ 10,897.411,228.611,179.910,876.111,207.311,158.6¥93,83056日
50 別線派A 10,897.411,228.611,179.910,876.111,207.311,158.6¥93,83056日
51 別線派B 10,897.411,228.611,179.910,876.111,207.311,158.6¥93,83056日
52 別線派C 図ハ 10,941.511,271.311,215.210,920.211,250.011,193.9¥94,16056日
53 肯定派 同一派 木下
経由
図イ 10,917.011,247.211,183.510,895.711,225.911,162.2¥93,83056日
54 別線派A 10,917.011,247.211,183.510,895.711,225.911,162.2¥93,83056日
55 別線派B 10,917.011,247.211,183.510,895.711,225.911,162.2¥93,83056日
56 別線派C 図ハ 10,961.111,289.911,218.810,939.811,268.611,197.5¥94,16056日
57 BRT+
IGR派
否定派 同一派 図2 図2 図イ 11,007.611,345.511,310.110,931.011,268.911,233.5¥95,33057日
58 別線派A 11,007.611,345.511,310.110,931.011,268.911,233.5¥95,33057日
59 別線派B 11,007.611,345.511,310.110,931.011,268.911,233.5¥95,33057日
60 別線派C 図ハ 11,051.711,388.211,345.410,975.111,311.611,268.8¥95,66057日
61 肯定派 同一派 木下
経由
図イ 11,027.211,364.111,313.710,950.611,287.511,237.1¥95,66057日
62 別線派A 11,027.211,364.111,313.710,950.611,287.511,237.1¥95,66057日
63 別線派B 11,027.211,364.111,313.710,950.611,287.511,237.1¥95,66057日
64 別線派C 図ハ 11,071.311,406.811,349.010,994.711,330.211,272.4¥95,88057日

† 営業キロ派・運賃計算キロ派の実乗可能粁程は、田端問題否定派の計算方法に拠る。
‡ 「木下経由」は南関東の「実乗可能粁程最長路(田端問題肯定派)」の図に示した通り。

将来の変化

根室線(東鹿越~新得間)の廃止

根室線の東鹿越~新得間は、2016年の台風第10号により被災して以来不通となっており、復旧の目処が立っていません。
同区間はJR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区」としている区間の一つであり、沿線自治体の支援等の動きが無い限り、廃止が避けられない可能性があります。

以下、東鹿越~新得間を通れなくなった場合の最長片道切符の経路を示します。

東鹿越~新得間を通らない場合、運賃計算キロを最長とするか、営業キロ・実乗可能粁程を最長とするかに依り結果が変わってきます。
特筆すべきは営業キロ・実乗可能粁程最長路であり、こちらは稚内を端点とする現行の経路とは異なり、長万部を端点とする経路となっています。

最長片道切符 北海道(東鹿越~新得間を除く 運賃計算キロ最長路)
運賃計算キロ最長路
最長片道切符 北海道(東鹿越~新得間を除く 営業キロ・実乗可能粁程最長路)
営業キロ・実乗可能粁程最長路

そうなると長万部~釧路~網走~長万部(逆回りも可)の閉路ができますが、これは肥前山口~早岐~諫早~肥前山口の閉路と両立できません。
一方の閉路を切断し、閉路を1つにする必要があります。

両端点附近の区間の営業キロ(運賃計算キロも同じ)を見ると、以下のようになっています。

2つの閉路とその解消
2つの閉路とその解消

経路の最長性を損なわないように閉路を解消するため、最も短い区間である「肥前山口~大町間」または「肥前山口~肥前白石間」を取り除くことを考えます。
どちらも同じ長さ (5.1 km) なのでどちらでも構わないのですが、本稿では肥前山口~肥前白石間を取り除くことにします。
斯くして元の経路より 5.1 km だけ短い「肥前白石→大町→肥前山口→長万部→釧路→網走→長万部」という経路が得られました。

それでは、肥前山口~肥前白石間を取り除いて得られた経路が本当に最長路なのでしょうか?

答えはです。
肥前山口~肥前白石間を取り除いた上で上述の九州(小倉以西)の経路を改めて求め直すと、以下のようになります。
「営業キロ派かつ新在別線派A」の最長路は元々肥前山口駅を端点とする図イでしたが、肥前山口~肥前白石間を取り除いたことで図ニの粁程を下回り、結果として枕崎駅を端点とする図ニの経路が最長路になります。

各流儀による九州の経路(東鹿越~新得間廃止時)
相違点1\相違点5\相違点5
相違点1\
新在同一派新在別線派A新在別線派B新在別線派C
営業キロ派図イ'図ニ図ロ'図ハ'
運賃計算キロ派図イ図ニ図ニ図ハ
実乗可能粁程派図イ'図イ'図イ'図ハ'
最長片道切符 九州(図イ')
図イ'
最長片道切符 九州(図ロ')
図ロ'
最長片道切符 九州(図ハ')
図ハ'
最長片道切符 九州(図ニ)
図ニ
最長片道切符 九州(図イ')
図イ'
最長片道切符 九州(図ロ')
図ロ'
最長片道切符 九州(図ハ')
図ハ'
最長片道切符 九州(図ニ)
図ニ

各流儀の起終点を纏めると次の表のようになります。
流儀に依って最長路が「北から南」だったり「南から北」だったりどちらでも構わなかったりと、大きく異なることになります。

各流儀による最長路の起終点(東鹿越~新得間廃止時)
相違点1\相違点5\相違点5
相違点1\
新在同一派新在別線派A新在別線派B新在別線派C
営業キロ派肥前白石/大町→長万部枕崎→長万部肥前白石/大町→長万部肥前白石/大町→長万部
運賃計算キロ派稚内→肥前山口稚内↔枕崎(両方向可)稚内↔枕崎(両方向可)稚内→肥前山口
実乗可能粁程派肥前白石/大町→長万部肥前白石/大町→長万部肥前白石/大町→長万部肥前白石/大町→長万部

日田彦山線(添田~夜明間)のBRT化

日田彦山線の添田~夜明間は、2017年の九州北部豪雨で被災して以来不通となっており、将来的には気仙沼線・大船渡線と同様にBRTによる復旧が為されることが決定しています。

BRT転換後の乗車券の扱いがどうなるのか、鉄道線と通しの乗車券は発売されるのか(される場合、気仙沼線・大船渡線BRTや私鉄との通しの乗車券は発売されるのか)は本稿執筆時点では不明です。
もし現行通りの経路の乗車券が発売されるのであれば最長片道切符の経路にもあまり影響は無いものと予想されますが、そうでないとなると最長片道切符の経路も大きく変わります。
以下、添田~夜明間を通れなくなった場合の最長片道切符の経路を示します。

添田~夜明間を通らない場合、新在同一派か新在別線派かに依り結果が変わってきます。
現行経路の「南九州を回ってから日田彦山線を通って長崎方面に至る」という経路が採れないので、いずれも先に福岡県内陸部の各線を通ってから南九州を回る経路となっています。

最長片道切符 九州(添田~夜明間を除く 新在同一派)
新在同一派の最長路
最長片道切符 九州(添田~夜明間を除く 新在別線派)
新在別線派の最長路

なお、これらの経路は肥前山口~肥前白石間を取り除いても最長性は損なわれません。

西九州新幹線の暫定開業

西九州新幹線は、2022年に武雄温泉~長崎間の暫定開業が予定されています。
同区間が開業すると江北(2022年に肥前山口より改称)以西の路線網が変化し、多くの流儀で最長片道切符の経路が長くなります。

西九州新幹線の暫定開業
西九州新幹線の暫定開業

西九州新幹線暫定開業後の九州(小倉以西)の経路は以下のようになり、端点が江北駅から新大村駅に移ります。
「運賃計算キロ派かつ新在別線派B」の最長路は元々枕崎駅を端点とする図ニでしたが、江北以西の粁程が伸びることで図ロ''の方が長くなります。[注2]

各流儀による九州の経路(西九州新幹線暫定開業時)
相違点1\相違点5\相違点5
相違点1\
新在同一派新在別線派A新在別線派B新在別線派C
営業キロ派図イ''図イ''図ロ''図ハ''
運賃計算キロ派図イ''図ニ図ロ''図ハ''
実乗可能粁程派図イ''図イ''図イ''図ハ''
最長片道切符 九州(図イ')
図イ''
最長片道切符 九州(図ロ')
図ロ''
最長片道切符 九州(図ハ')
図ハ''
最長片道切符 九州(図ニ)
図ニ
最長片道切符 九州(図イ')
図イ''
最長片道切符 九州(図ロ')
図ロ''
最長片道切符 九州(図ハ')
図ハ''
最長片道切符 九州(図ニ)
図ニ

なお、北海道側に閉路ができる流儀の場合、新大村~竹松間を取り除いて「竹松→早岐→武雄温泉→新大村→諫早→江北→…」とします。
この変更により最長性は損なわれません。[注3]

北海道新幹線の札幌延伸

北海道新幹線は、2030年度に新函館北斗~札幌間の延伸開業が予定されています。
これと同時に小樽以西の函館線は経営分離される予定です。

北海道新幹線札幌延伸後の北海道の経路は以下のようになります。
札幌~長万部間の粁程が短くなるので、長万部駅が経路の端点となることは無くなり、稚内駅が端点となります。

最長片道切符 北海道(北海道新幹線札幌延伸時 東鹿越~新得間を含む)
東鹿越~新得間を含む
最長片道切符 北海道(北海道新幹線札幌延伸時 東鹿越~新得間を除く)
東鹿越~新得間を除く

お願い・注意事項

本稿で紹介している最長片道切符の経路は筆者の独自の計算により導出したものです。
入力値や計算の誤り、規則の解釈の相違等により、真の最長路と異なっている可能性があります。
もし誤りがありましたら当サイト掲示板にてご指摘頂けると幸いです。

また、本稿の経路はあくまで理論上考えられる経路であり、実際に発券可能であることを保証するものではありません。
JR各社間や発券担当者間の解釈の相違や解釈の変更等により、実際には発券されない可能性もあります。
発券できた/できなかったといった情報があればお寄せ頂けると幸いです。

なお、本稿の内容に因り生じた如何なる損害に対しても、筆者は一切の責任を負いかねます。ご了承ください。

脚注