旧暦の計算《概要編》

本ページは旧暦の計算のサブページです。

1873年のグレゴリオ暦への改暦まで日本で使われていた旧暦
本ページでは、旧暦というものがどのような暦であるかの概要と、日本における旧暦の変遷について記載する。

目次

旧暦とは

日本で言う旧暦は、太陰太陽暦の一種である。
これは、月(太陰)の動きに基づいて1ヶ月の長さを定めつつ、太陽の動きに基づいて1年の長さを定める暦である。

例として、旧暦2023年(グレゴリオ暦2023年1月22日–2024年2月9日)のカレンダーを以下に示す。

例として、旧暦2023年(グレゴリオ暦2023年1月22日–2024年2月9日)のカレンダーを以下に示す。
(カレンダーは横にスワイプするとスクロールできる)

旧暦2023年1月のカレンダー 旧暦2023年2月のカレンダー 旧暦2023年閏2月のカレンダー 旧暦2023年3月のカレンダー 旧暦2023年4月のカレンダー 旧暦2023年5月のカレンダー 旧暦2023年6月のカレンダー 旧暦2023年7月のカレンダー 旧暦2023年8月のカレンダー 旧暦2023年9月のカレンダー 旧暦2023年10月のカレンダー 旧暦2023年11月のカレンダー 旧暦2023年12月のカレンダー
旧暦2023年1月のカレンダー 旧暦2023年2月のカレンダー 旧暦2023年閏2月のカレンダー 旧暦2023年3月のカレンダー 旧暦2023年4月のカレンダー 旧暦2023年5月のカレンダー 旧暦2023年6月のカレンダー 旧暦2023年7月のカレンダー 旧暦2023年8月のカレンダー 旧暦2023年9月のカレンダー 旧暦2023年10月のカレンダー 旧暦2023年11月のカレンダー 旧暦2023年12月のカレンダー

上のカレンダーには、日付と併せて以下の用語が示されている。
これらは月と太陽の動き表すものであり、旧暦の日付はこれらに基づいて決定される。

さく上弦じょうげんぼう下弦かげん
月の満ち欠け(朔望)を表す。「朔」は新月🌑︎、「上弦」は上弦の月🌓︎、「望」は満月🌕︎、「下弦」は下弦の月🌗︎。
立春りっしゅん雨水うすい啓蟄けいちつ春分しゅんぶん清明せいめい穀雨こくう立夏りっか小満しょうまん芒種ぼうしゅ夏至げし小暑しょうしょ大暑たいしょ立秋りっしゅう処暑しょしょ白露はくろ秋分しゅうぶん寒露かんろ霜降そうこう立冬りっとう小雪しょうせつ大雪たいせつ冬至とうじ小寒しょうかん大寒だいかん
二十四節気にじゅうしせっき。1年間を24個に分ける点。奇数番目の12個を正節せいせつ、偶数番目の12個を中気ちゅうきと呼ぶ。[注1]

なお、朔望や二十四節気は、日本時間(中央標準時)における日付を記している。

日付の決定方法

上のカレンダーからわかる通り、朔の日を各月の「1日」とし、翌日を「2日」、翌々日を「3日」、… と続けることで日付が定まっている。
月は平均約29.53日周期(朔望月)で満ち欠けを繰り返すので、旧暦の1ヶ月の長さも同じく平均約29.53日となる。

1ヶ月の長さが約29.53日ということは、12ヶ月の長さは約354.36日となる。
これは1太陽年(平均約365.24日)と比べて約10.88日足りない。
つまり、単純に12ヶ月を以て1年としたのでは、実際の季節の移り変わりに対して毎年約10.88日ずつ日付が早く進んでしまうことになる。
そこで、旧暦では19年に7回程度閏月うるうづきと呼ばれる月を挿入することで、1年の長さが太陽年から乖離しないようにしている。
(上のカレンダーにおける「閏2月」がそれに当たる)

どの月を何月と呼ぶか(閏月をどこに挿入するか)は、「12個の中気それぞれを各月に配置し、残った月を閏月とする」というのが基本的な考え方である。

とは言え、月によっては中気が複数回現れることがあり、必ずしもこの通りには月の名称を決定することはできない。
実際には中気に優先度を付けて、以下の規則で月の名称を決定することになっている(平山規則)。

  1. 冬至を含む月を「11月」、
    春分を含む月を「2月」、
    夏至を含む月を「5月」、
    秋分を含む月を「8月」とする。
  2. 前条で月の名称が決定できない場合、中気を含まない月を閏月とする。

月の名称の決定方法については、詳細は節気の計算編で説明する。

日本で使われてきた暦

一口に「旧暦」と言っても、使われていた暦法は時代に依って少しずつ異なっている。
これを纏めたものが次の表である。

日本で使われてきた「旧暦」
暦法 使用期間 節気 時刻系 備考
平朔儀鳳暦 - 平朔 平気 (平均太陽時)[注2] 儀鳳暦を平朔で計算したもの。
実際に使われていた暦ではないが、古い時代の暦の推定に使われることがある。[注3]
元嘉暦げんかれき    –697 中国から輸入した暦。
元嘉暦と儀鳳暦は併用期間あり。
五紀暦は大衍暦と併用されていたとされる。
儀鳳暦ぎほうれき 697–763 定朔
大衍暦だいえんれき 764–861
五紀暦ごきれき (858–861)
宣明暦せんみょうれき  862–1684
貞享暦じょうきょうれき 1685–1754 京都平均太陽時 日本で作られた暦。
中国との時差が考慮され、京都の時刻が基準となった。
宝暦暦ほうりゃくれき 1755–1770
修正宝暦暦 1771–1797
寛政暦かんせいれき 1798–1843 京都真太陽時 日本で作られた暦。
計算式に西洋天文学の知見が取り込まれ、精度が格段に上がった。
天保暦てんぽうれき 1844–1872 定気
(旧暦) 1873–1887 東京平均太陽時 暦法書記載の計算式ではなく、天文学的観測による真の朔や節気の時刻に基づいて計算する。
グレゴリオ暦への改暦(1873年)以降も1909年までは政府の頒暦に旧暦が併記されていた。
現在「旧暦」と呼ばれているものは、これに倣って計算したものである。
1888–     中央標準時[注4]
(明石平均太陽時)

表中の平朔と定朔平気と定気平均太陽時と真太陽時についてはそれぞれの項で説明する。

各暦法の計算方法

前節で述べた通り、旧暦の日付は二十四節気がいつ訪れるかを求めれば決定できる。

元嘉暦から天保暦までの各暦は、暦法書に朔や二十四節気の計算方法が記載されており、それに従って暦が作られていた。
暦法書記載の計算式はあくまで天体の運行の近似にすぎないので、時折誤差を補正し精度を高めるために改暦が必要となった。
元嘉暦の採用から天保暦に至るまで何度も改暦が為されているのはこれが理由である。

1873年以降は、暦法書の計算式は廃され、実際の天体の運行に基づく真の朔や二十四節気の時刻が旧暦の作暦の基準となった。
(公式には1873年を以て旧暦は廃止されているが、その後も1909年までは政府による頒暦に旧暦が併記されていた)

具体的な計算方法は朔の計算編節気の計算編計算式編に記す。

計算の結果と実際に施行された暦との差異

各暦法による暦の計算方法は上述の通りなのだが、実際に施行された暦は計算により求まる結果とは若干異なっていることがあった。
これは、宣明暦以前の古い時代において、様々な理由で人為的操作により計算結果に修正が加えられていたことに因る。
計算結果に修正が加えられた理由の例を以下に示す。

貞享暦以降は基本的には人為的操作は加えられていない。
但し、修正宝暦暦の時代に3回だけ計算と合わない暦が施行されており、これは単純な置閏誤りと見られる。
(朔日の夜半から朔時刻までの間に存在した中気を、本来は当月の中気として扱うべきだが、前月の中気として扱ってしまったようである)

古い時代にいつどのような人為的操作が加えられたかは完全に明らかになっている訳ではないが、史料による校訂結果として『日本暦日原典』の記載が最も信頼できるものとされている。
人為的操作があったと考えられる事例の一覧は国立天文台 暦計算室に示されている。

本稿共通の約束事項

節気番号と月番号

本稿では二十四節気や旧暦の暦月に以下の通り通し番号を振る。
(これはあくまで本稿で便宜的に振った番号であり、一般に通用するものではない)

節気番号
西暦0年(西暦紀元前1年)の冬至を第0節気と定め、次の大寒を第1節気、次の雨水を第2節気、… とすることで順々にm 節気を定める。
西暦0年の小雪以前の二十四節気には負の番号を与える。
節気番号が二十四節気のどれに対応するかは平気と定気の表を参照。
月番号
第0節気を含む旧暦月(0年11月)を第0月と定め、翌月(0年12月)を第1月、その翌月(1年1月)を第2月、… とすることで順々にmを定める。また、第 m 月の朔をmと呼ぶ。
西暦0年の10月以前の暦月には負の番号を与える。

紀年法と暦法

本稿では紀年法と暦法とを区別する。
本稿で解説している「旧暦」は暦法の一種である。

紀年法
各暦年に固有の呼称(番号)を与える方法。代表的なものには以下のものがある。
暦法
各暦年の中で各日に固有の呼称(日付)を与える方法。代表的なものには以下のものがある。

本稿で用いる紀年法は、暦法に依らず専らキリスト紀年法とする。
例えば「1868年」は「明治元年」と全くの同義とし、旧暦(天保暦)における「1868年」はグレゴリオ暦における1868年1月25日–1869年2月10日の期間を指すものとする。

出典・参考資料

脚注